24日早朝3時36分イタリア中部で発生したマグニチュード6.2の地震およびその余震により、イタリア中部の3州(ラツィオLazio、ウンブリアUmbria、マルケMarche)が交差する山間部に大きな被害が出ています。
賢明な救出活動が続き、現在までに238人が瓦礫の中から救出されました。
しかしながら、27日現在、人口約2500人のアマトリーチェAmatriceで229人 、人口約 660人のアクーモリAccumoliで11人、人口約1300人のアルクアータArquataで49人、計290人の死亡が確認されています。今、こう数字を書いている間にも、死者の数が増えていくことに、ひどい悲しみを感じています…。
最も被害が大きいアマトリーチェでは、街の半分以上の建物が倒壊してしまいました(地震前・地震後の上空から見たアマトリーチェ)。
美しい中世の街並みを残すアマトリーチェは、豚頬肉の塩漬け、羊乳のチーズ、トマトを用いたパスタソース「アマトリチャーナ」でも有名な街でした。この週末は、そのソースにちなんだスパゲッティ祭りを控えていたのに…。私と夫も、アマトリチャーナ・スパゲッティを食べながら「そろそろアマトリーチェのスパゲッティ祭りだよね♪」と、話していたのに…。
イタリア文化を代表する石造建築は地震に弱い
イタリアでは、古くから存在する街の中心地を「チェントロ・ストーリコCentro storico(歴史地区)」と呼んでいます。そして、今も尚、その歴史地区が街の中心として成り立っています。日本の街の中心地は「駅前周辺」が多いと思いますが、イタリアの街の中心地は「街の聖堂・主なる教会を取り巻く歴史地区」を指します。イタリアの鉄道駅は、中心どころか街外れにあることが殆どです。
そして、イタリアにはこの歴史地区が山ほど存在します。
世界遺産に指定されているだけでも
そして、その何倍もの数の「ガイドブックにも載らない素敵な歴史地区」が点在しているのです。
車でイタリアを旅すると、「何?この可愛い集落は!なんだ??この素敵な丘の上の街は??(いずれもガイドブックで紹介されていなかったりする)」が目白押しです。
わたくし、日々イタリアの悪口を言っていますが(汗)、あの国の食文化と街並みの美しさに関しては、脱帽していますから。心の底から認めていますからっ!
で、その美しい街並みを作り出すものは何かというと、石です。そう、とにかく地震に弱いといわれる石造建築です…。
今回の地震で大きな被害を受けたアマトリーチェAmatriceの歴史地区も例外ではなく、大半が石造りの歴史地区でした。
石造りだったからか...が、そうとも言い切れず。
なぜなら、この地震で建物の倒壊0死者0(被害がなかったわけではない)であった、震源地からほど近いウンブリア州のノルチァNorciaという街もまた、石造りの歴史地区を持つ街なのです。が、しかし、石造りといっても、この街の場合は全ての建物が耐震補強されていたということなのです。
・・・
アマトリーチェは耐震対策があまかったと…。街の耐震補強が完了していたら被害は出なかったとは言い切れませんが、少しは軽減できたのでは?今となっては悔やむばかりです...。
この、アマトリーチェの耐震対策が遅れた理由としては、「州の耐震対策補助」への申請が難しかったことも関係しているのではないかと言われています。
かれこれ7年前、アマトリーチェのあるラツィオ州は、州北部地域の耐震対策の為に200万ユーロ(2億3千万円くらい)を用意したらしいのですが、その助成金申請には補強をしたい建物に住んでいることを証明する住民票の提示が必須であったため、夏の避暑地としての別宅が多いアマトリーチェでは、住民登録されていないという理由で申請が受理されなかった家主が多かったそうです。
う~む。
イタリアの公共施設の造りは軟?
今回の地震では、3年前に耐震補強工事が完了したばかりのアマトリーチェの小学校が半壊(写真)。しかも、「セメントであるべきところに砂が!」というとんでもない事実が発覚したものだから、州と市が責任のなすりあいバトル中…。そして、耐震補強のおかげで建物の倒壊がなかったというノルチァでさえも、街の学校3校うちの2校の建物が安全とは言えない状態…。
で、ですね、恐ろしいことに、地震でこういった公共施設が崩れることは今回が初めてではなく、
2002年のモリーゼ州地震(マグニチュード5.8)では、なんと、地震で唯一派手に崩壊した建物が小学校…。しかも、この地震で亡くなった30人のうち28人はこの小学校の中にいた児童27人と教師1人だったのです。
それだけではありません。
9年前、2009年のラクイラ地震では、県庁の建物が崩壊…。地震対策本部になるはずの建物が使い物にならなくなってしてしまったのです。
このような経緯もあり、イタリア人の多くは、公共施設の造りを全く信用していません。
被災者の方が
「家にも帰れない。でも、避難場所の学校の体育館の中にいるのもこわい。」
と訴える気持ちも解ります。
イタリア人の地震に対する防災意識
イタリアは地震のある国ですが、地震大国日本の様な国に比べれば地震が少ないと感じてしまうせいなのかどうなのか?今ひとつ地震に対する意識が低いのですなぁ…。
おそらく、
「キリギリスがこの先起こるかもわからない災害のためにチミチミ備えるとでも?そんなことしたら、災害が起こる前にストレスでおかしくなって、美しい音色のバイオリンも弾けなくなってしまうじゃないか!」
という人生観を持つ国民性ゆえもあるのではないかと…。
しかしね、過去40年間を振り返って見ただけでも、
- フリウリ州地震(1976年、マグニチュード6.4、震源の深さ6㎞、死者989人)
- カンパニア州・バジリカータ州地震(1980年、マグニチュード6.9、震源の深さ30㎞、死者2914人)
- ラクイラ地震(2009年、マグニチュード6.3、震源の深さ8.8㎞、死者308人)
と、10~20年間隔でマグニチュード6.2以上直下型地震が起こっているのですよ。しかも、それ以下級の地震ならば、ほぼ毎月あるらしいのよ…。
イタリア人の夫曰く、
「大地震で家がつぶれ人が亡くなり、悲しみに明け暮れ、色々と悔み始めると、どうにかしなければ!と動き出す。が、それでも心の奥では『頻繁に起きるようなことではない』と思っているから、今一つ危機感が生まれてこない。常に危機感があるような状態じゃないと、国もお金をかけない。」
だそうです。
う~ん。でも、2002年のモリーゼ地震で唯一派手に崩れた小学校のケースなんて、どう考えても耐震補強を怠ったせいで起こった悲劇だし…。で、今回のアマトリーチェの砂の件も…。
これ以上人災を増やさない為にも、耐震補強(ウソのない)に努めていただきたいものです。