ズル賢いは褒め言葉
イタリア人が褒め言葉によく使う「フルボ Furbo(女性形はフルバFurba)」。イタリア人の価値観を知る上で、とても重要な言葉です。
私が持っている辞書で調べてみると、日伊辞書では抜け目のない/ズル賢い/頭が切れる、伊英辞書でもSly,Cunning(こうかつな/悪知恵が働く/ずるい),Smart(利口)等と訳されています。
頭は切れるけれどいい加減で不誠実な人間の顔がたくさん浮かんできます...(汗)。
イタリア人は、「かしこい!」と言いたい時に、このフルボをやたらと使いたがります。
「コメ セイ フルボ!Come sei furbo! あなたはなんてズル賢いの!(すなわち、あったまイー)」と、純粋に言われて、
「グラッツィエ ♪ Grazie ♪ ありがとう♪」と、誇らしげに返す。
これがイタリア流。
ちょっとズルさがないと、褒められた気がしないのかしら…?
もしかして、ジローラモさん界隈で使われていた(いる?)「ちょいワル」の語源は「フルボFurbo」?
ルパンの美しく人を出し抜く生き様が好き
フルボといえばルパン。
イタリア人は、ルパン三世が大好きです。
イタリアのテレビでルパンが初めて放送された1979年から2015年の新シリーズ(なんと、イタリアで先行放送)まで、テレビにルパンが映っていなかった年はないんじゃないか?というくらい、ルパンが頻繁に放送されています。
それもそのはず、ルパン三世には、イタリア人の生き方を語る上では欠かせない3タイプの人物が出てくるのです。
- 盗みを働く際に殺人を決して行わない「純粋な泥棒」ルパン→イタリア人が大好きな「フルボFurbo」
- そのルパンを毎回サラリとかわすナイスバディな不二子→イタリア人が大好きなエロ「フルバFurba」*
- ルパンファミリーに出し抜かれ続けている銭型のとっつぁん(イタリア名:Zazà ザザ)→騙され役「フェッソFessoまぬけ」
それプラス、五右衛門がなんでも切っちゃったり、次元が早打ちでバンバンするんだもの、たまらんよね。
信用するのは良いこと、信用しないのはもっと良いこと
イタリアには、
フィダルシィ エ ベーネ、ノン フィダールスィ エ メッリオ fidarsi è bene, non fidarsi è meglio
(信用するのは良いこと、信用しないのはもっと良いこと)
ということわざがあります。
皆がこぞって「人を出し抜こう」とするのですから、心を許せば、すぐに騙され、はめられ、とっつぁんのように「フェッソまぬけ」な人にされてしまう環境なのです。
ですから、金八先生のように人を信じていたら、心が傷つくどころか借金を背負わされてしまうかもしれません(泣)。
ローマ、ミラノ、ナポリなどイタリア大都市の「ぼったくり、スリ、置き引き」被害率がべらぼうに高いのも、この「人を出し抜こう精神」の弊害でしょう。
私が住んでいたミラノ周辺でさえも、
- ぼったくり、スリ、置き引きぐらいでは、日常的過ぎてニュースにも取り上げられない。
- 知人や親類の数人が被害にあっているのが普通(特に老人狙い)。
- うっかり置き忘れたものは、平均5分以内に紛失。
- 日本領事館へ行く度に、被害者にあう。
これがナポリになると
- 知人や親類の数人が、ピストル強盗の被害にあっていてもおかしくない(泣)。と、エスカレート...。
ですから、人々は、こういった被害にあわないように注意します。しかし、「信用しない」の度が行き過ぎて、
- 市場などでニコニコする店主がいると、「ニヤニヤ怪しい、ぼったくる気か?」と、警戒する。
- 道を訊かれても、念のため無視する。
- 何もなくても、とりあえずガンたれて歩く。
と、違う意味で怖くなっていく民衆達(泣)。
金銭的・精神的・肉体的なダメージを受けて「フェッソFessoまぬけ」な思いをしない為には、やむ負えないのかなぁ(汗)。